価値観が変わる体験を生む好奇心の力

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3.減退し続ける好奇心


減り続ける興味対象

 前のページでは、好奇心を生み出す人の心理状態について述べた。感情にも、恐怖や驚きなどいろいろあるが、どんな感情であれ、特定の対象に触れるときの興奮するほどの感情の高まりが人の好奇心を引き出す。
 
 ただし、人の脳の機能には、興奮を抑制する働きをするものがある。歳をとるにつれて、この働きは強くなる。このページでは、齢をとるとともに興味の対象が減ってゆく問題を考える。
 
 好奇心を抱く過程で、絶対に必要なものがある。それは興味を引く対象だ。興味を引く対象と出会うことがなければ、好奇心を抱くことはない。幼い子供であれば、見るもの全てが新鮮で、自分の周りは興味をそそるものばかりだ。幼い子供は好奇心の塊で、なんにでも触りたがる。
 
 しかし、大人になるに従って、興味が持てる対象に触れる機会が減ってくる。触れる機会が減ると言うよりも、触れても興味が湧かなくなると言った方が正しいかもしれない。大人になると、個人の状況にもよるが、関心事が仕事、子育て、健康といった限られた対象に絞られてくる。
 
 就職すれば、生活の時間の大部分は仕事に費やされる。結果的に、日々の関心事の中心は仕事になってしまう。また、結婚して子供が生まれれば、子育てが家庭の最重要課題になる。さらに、年をとるにつれて、病気になる機会が増えるので、治療や予防への対処が生活の中で増える。
 
 仕事、子育て、病気への対処は日々やらなければならない業務的な活動で、生活の時間の大部分を占める。人はこの業務活動をうまくこなすために、自然と生活をパターン化するようになる。そして、生活パターンを壊すような活動が生活の中に入り込むことを心配するようになる。
 
 この心配事は、人の行動を過度に限定する問題がある。本来なら、興味を持って楽しんで触れることができる対象があっても、些細な事が心配事を連想させ、危険を感じてその対象を避けてしまうことがあるのだ。このことが興味の対象を減らす一因となる。
 
 歳をとるとともに興味の対象が減ってしまうのは、心配事が行動を限定することも含めて、もう一段掘り下げたところに根本的な原因がある。それを次に説明する。

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人は飽きる生き物

 歳をとるにつれて興味の対象が減るのは、実は飽きるという人の特性に根本的な原因がある。同じような行動ばかり繰り返したり、多量の類似情報に曝されると、興味が薄れてしまう現象だ。
 
 人は成長過程で、様々な行動を繰り返し、それらの行動を習慣化する。また、多くの情報を吸収する中で、情報を体系化して知識とする。習慣や知識を身に付けることは、日常生活の特定の場面で、適切な行動や判断を自動的に行うのに必要なことだ。
 
 しかし、習慣や知識となったものは、自分にとっては当たり前の行動であり、常識である。もはや、それ自体は興味を抱く特別の存在ではなくなってしまう。このように、行動の仕方やものを見る視点が固定される状態に達したことを飽きるという。
 
 この飽きるという人の性質は、日常生活で触れる多くの情報に一々興奮せず、自分にとって特別な情報だけを選別して注意深く処理する、脳の大事な機能の表れとも言える。マンネリ化した生活に安心感があるのも、それが飽きるほど慣れ親しんだ状態だからだ。
 
 しかし、飽きるという人の性質は、行き過ぎると、人を変化や違いに対して鈍感にするという弊害を生む。また、常識が思い込みに発展することもある。新たに触れる対象を、その対象の一面だけ見て、自分の常識の範疇に収めたり、偏見の対象として避けてしまう。
 
 前述の心配事が人の行動を限定する問題も、「このようなものは危険に違いない」という思い込みが、新たな対象に深く関わる事を妨げるのだ。
 
 初めて触れるものには、確かに過去に自分が触れたものとの共通点はあるが、必ず未知の側面があるものだ。飽きる状態が行き過ぎると、新たな対象に見える、自分の常識との一致点だけを見て満足してしまう。そして、その対象が持つ未知の側面を追求する行動を止めてしまう。
 
 飽きるという脳の機能は、感情変化を抑制する。新たな対象に一時的に興味を持っても、一瞬オンになり掛かった心の興奮スイッチを、飽きがオフにする。このため、その対象が自分にとって面白い特別な対象とは思えなくなってしまう。これが、興味の対象が減ってゆく原因になる。
 
 好奇心を高める上で、人の飽きる特性を抑え、興奮を呼び起こし、興味を追求する行動を持続させることが課題になる。次のページから、飽きを抑え、好奇心を高めてゆく方法を考えてゆく。



マンネリ生活を脱出する方法がわかるサイト。好奇心を高めてワクワクする体験を生み出すコツを解説。

双子の犬(ハンドルネム)のエッセイNo3。